芝草の品種

品種とは、形態的特性および表現する形質が、同種内の多品種から識別できる同じ植物のグループである。同じ繁殖法により、特定の遺伝型として均等性と永続性をもつ個体群である。ここでいう特性とは、1つの品種が他の品種に対して示す品種の特性(草丈、生育型、葉幅、耐寒性、耐病虫性など)をいう。





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芝草の育種目標

現在、葉色、テクスチャー、密度、耐環境ストレス性、広域適応性、耐病虫性、雑草抵抗性、すり切れ抵抗性、プレーアビリティ、サッチ形成など、特徴のはっきりした品種が求められている。

1983年から始まったUSGAグリーンセクションの育種計画は、節水、無農薬、低コストの条件下で研究を進めている。日本では千葉県、茨城県、静岡県の農業試験場をはじめ、いくつかの民間企業において芝草の育種が行われている。



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育種法

集団選抜法

悪いものや形質の劣る個体を取り除き、残った個体を自然受粉(open pollination)させ、その種子を混ぜて時代をつくる方法。ケンタッキー31フェスクはこの方法で育成された。播種後44年目の1931年、生き残っていた個体から一括採種して品種としたものである。

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単一個体選抜法

優れた1個体を選抜する方法で、種子の場合は自殖を繰り返し目標形質の同型(ホモ)化をはかる。栄養系の場合は、1個体から栄養繁殖で増殖する。「みやこ」「チバグリーンB−1」などは、この方法である。

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循環選抜法

目標としている形質の遺伝子の集積をはかる方法で、選抜個体間または系統間で可能な総当たり式の交配組み合わせを行い、その雑種種子を一緒にして次のサイクルの材料とし、それを繰り返し仕上げて行く。

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合成品種法

多数遺伝子間のあらゆる組み合わせの相互作用によって合成され、以降は自然受粉種子によって維持される品種。

多系統品種

2つまたはそれ以上の系統の種子を混合(ブレンド)して合成品種とする方法で、自然受粉で種子を増殖する。ブレンドの割合を変えたり、新系統を加えたりして別に合成することもある。

多数個体品種

最初に多数個体から目標形質の表現型で選抜を行い、それら選抜系統の組み合わせ能力をみるため交配を行い、その種子を用いて後代検定を行う。後代検定で成績のよかったものを合成個体に決定し、個体毎に採取した種子を混合して合成品種とする。それを播き採種したものを合成一代(Syn-1)で育種家種子と呼び、それ以降、Syn-2を原々種、Syn-3を原種で、Syn-4が市販される。



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暖地型芝草の品種

シバ (ゾイシア) 類

米国ではゾイシアの育種が始まったのは古く、現在基準品種となっているマイヤー(Meyer)は1951年である。その後、ノシバ(Z.japonica)とビロードシバ(Z.tenuifolia)の種間雑種であるエメラルド(Emerald)が1962年に作出された。近年は節水、管理コストの低減などの点から、ゾイシア類が注目され、1982年に芝草の育種チームが日本、韓国、台湾、フィリピンから生態型収集を行い、それを材料に新品種を育成中である。これまでは栄養系の育種が中心であったが、種子系の育種も始まり、近年発売が開始されている。

ゾイシア新品種増殖圃場 日本では1980年代に入ってから、農水省が特別研究として「日本シバの特性調査」を行ったのが最初である。また、ジャパン・ターフグラスが育種を開始し、「みやこ」が日本では最初に登録されたゾイシアの一つである。現在は千葉県農試を筆頭に静岡県農試高冷地分場、茨城県農試で育種中である。


シバ類の主要品種 (未登録品等も含む)
品種名 種名
マイヤー Z.japonica
エメラルド Z.j.×Z.tenuifolia
エルトロ Z.j.×Z.matrella
ビクトール Z.j.×Z.m.
みやこ Z.j.×Z.m.
みさと Z.j.×Z.m.
はるか Z.j.×Z.m.
はやと Z.j.×Z.m.
つくばグリーン Z.j.
Zen100 [種子] Z.j.
SR9000 [種子] Z.j.

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バミューダグラス類

アフリカ原産のバミューダグラスは1751年はじめて芝草として導入されたが、使用されたのはセントルイス (St. Louis) という品種が1920年頃にフロリダで植えられたのが最初である。本格的な育種が始まったのは1946年からで、ジョージア州のティフトン農試である。交雑を行い、1952年よりティフファイン(Tiffine)、ティフグリーン(Tifgreen Tifton328)、ティフウェイ(Tifway Tifton419)、ティフドワーフ(Tifdwarf)、ティフウェイIIなどが作出された。ティフトン農試の品種はいずれも雑種F1で3倍体であり、不稔性を持つ。そのため栄養繁殖しかできない。

現在、バミューダグラスの育種は種子系が主流であり、種としてキメの細かさが育種目標となっている。

バミューダグラスの主要品種
品種名 繁殖
Tifgreen 栄養
Tifway
Tifdwarf
Midlawn
Numex-Sahara 種子
Sonesta
Jackpot
Cheyenne
Sandevil
U3
Princess
Mirage
Primavera

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その他の暖地型芝草

近年育種が進んでいるのが、アルカリ土壌や粗放管理に耐えるバッファローグラスである。法面やラフ等の利用が今後増えると思われる。

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寒地型芝草の品種

ベントグラス類

クリーピングベントグラスが育種の主流であり、アメリカで当初ゴルフ場の生態型を母材にした栄養系の育種が行われ、アーリントン(Arlington)が1928年に選抜され、その後、オールドオーチャード(Old Orchard)など多くの品種が育成された。種子系ではオレゴン州の生態型そのままが1923年にシーサイド(Seaside)として登録されたのが最初である。しかし、1954年、種子系のペンクロス(Penncross)が育成された後は全世界で使用され、長い期間独占状態が続いた。ペンクロスの生育旺盛でマット化し易い欠点があるため、1978年に草勢のやや弱いペンイーグル(Penneagle)やペンリンクス(Pennlinks)が育成された。高温抵抗性、病害抵抗性が主な育種目標で、アメリカ及び欧州で多くの品種が育成されている。

日本では耐病性を中心に近年栄養系の育種が始まり、いくつかの品種/系統が販売されている。

コロニアルベントグラスではハイランド(Highland)、アストリア(Astoria)、ベルベットベントグラスではパイパー(Piper)やキングストン(Kingston)などいくつかの品種があり、育種も行われているが、日本では利用が少ない。

クリーピングベントグラスの主要品種
品種名 繁殖
Old Orchard 栄養
ミナクル
アート1号
チバグリーンB-1
Seaside 種子
Penncross
Penneagle
Pennlinks
Providence (SR1919)
SR2020
Cobra
Putter
18thグリーン
National
Cato
Crenshaw
Procup

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ブルーグラス類

ケンタッキーブルーグラスは単為生殖するため、遺伝子の分離や形質の変化が起こらず、優れた品種を作り出せば、そのまま維持できるが、新しい形質の付与や変異の拡大はしにくい。そのため古い品種が今なお多く使われており、1936年のフィルキング(Fylking)、1947年のメリオン(Merion)、1970年のバロン(Barron)などがそれである。近年の育種目標は、環境ストレス抵抗性、わい性化、病害抵抗性などである。

ウィンターオーバーシード用として、ラフストークドメドウグラスが注目されているが、まだ一般的ではない。

ケンタッキーブルーグラスの主要品種

品種名 繁殖
Fylking 種子
Merion
Barron
Merrit
Ram I
Barcelona
Destiny
Barenty
Amazon
Nustar
Nublue
Apex
Freedom
Touchdown
Snow KB II
Julia
Limousine
America
SR2000
SR2100
Abbey
Ascot
Midnight 種子・ソッド

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ライグラス類

ペレニアルライグラスはイギリスで牧草として長い間栽培されており、芝生用としても使われていたが、アメリカでは寒暖が大きいことと病害に弱いため芝生用としては定着しなかった。1962年に作られたNK100という品種が、その弱さのため、ウィンターオーバーシード用として利用できることが判り、注目されるようになった。その後、マンハッタン(Manhattan)、ペンファイン(Pennfine)が作出され、初期生育の速さやすり切れ抵抗性に強いことから需要が増えた。現在の育種目標は、エンドファイトの導入による耐虫害性の向上、ブラウンパッチなどにたいする耐病性の向上及び耐暑性の向上であり、近年作出されたものは性能向上が見られる。

アニュアルライグラスは主としてウィンターオーバーシード用にいくつかの品種が作出されているが、葉が粗放であることから利用されなくなっている。

ペレニアルライグラスの主要品種
品種名 繁殖
Pennfine 種子
Manhattan II
Manhattan III /E
Imagine /E
Affinity /E
Envy
WOS Perennial
Pennant
Wizard
Competitor
Excel
Magic
Saturn
Cutter
Fiesta II
SR4000
SR4100
SR4200
SR4300
APM
Advent
Dandy
PalmerII
PreludeII
Achiever

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フェスク類

トールフェスク

1961年より芝生用の育種が開始され、20年後の1981レベル(Rebel)という品種が作出された。それ以来深根性で耐干性に強いことが注目され、わい性化を中心に育種が進められ、多くの品種が作出された。現在の育種目標は、わい性化と細葉、耐病性である。

トールフェスクの主要品種
品種名 繁殖
Jaguar II 種子
Jaguar III
Gazelle
Southern Choice
Falcon II
Marksman
Starlet
Winchester
Empress
Mesa
Snow TF
Southerncross
Pixie
Super Shortstop
Mini-Mustang
SR8200
SR8300
Rebel II
Rebel Jr.
Tribute
Aztec
Mirage
Adobe

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ファインフェスク類

ファイン(細葉)フェスクは、耐陰性、耐干性に優れるため、近年の省管理型の芝草として注目を集めている。これまでの中心は、チューイングフェスク (CF) とクリーピングレッドフェスク (CRF) であるが、ハードフェスク (HF) も品種が作出され、利用も増えている。従来オランダでの育種が主であったが、近年アメリカでの育種も多くなっている。

ファインフェスクの主要品種
品種名 繁殖
Pennlawn (CRF) 種子
Shadow II /E (CF)
Seebreeze (CRF)
Aurola /E (HF)
Coquet (CF)
Banner (CF)
Banner II (CF)
Cindy (CRF)
Enjoy (CF)
Jasper (CRF)
SR3000 (HF)
SR3100 (HF)
SR5000 (CF)
Barcrown (CRF)
Crystal (HF)
Long Fellow (CF)
Molinda (CF)
Brigade (HF)
Silvana

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